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2011年12月12日月曜日

農林水産省政務官に先住民族生存捕鯨の実現にむけた要望書を手渡しました




2011年12月5日、アイヌ民族伝統生存捕鯨協会会長の畠山敏さんと、関東のアイヌ民族3名、和人の支援者5名が、農林水産省を訪問し、仲野博子政務官に、要望書「アイヌ民族伝統生存捕鯨復活を支援してください」を手渡しました。

畠 山さんは、アイヌ民族の権利回復にむけた、過去18年にわたる先住民族捕鯨(1)復活に向けた運動の経緯と、未だに前向きな回答が頂けていない経緯を説 明しました。また、世界でも捕鯨をしている国々・地域(2)あり、国際な圧力団体は、こうした捕鯨の中でも4カ国・地域の先住民族捕鯨には反対をしていな いこと、さらに、2008年に国会決議で、アイヌ民族が日本の先住民族であることが認められたことを受けて、政府に対する期待も伝えました。

仲野政務官は、アイヌ民族の捕鯨についての文化が、子や孫の代までも引き継いでいけるように努力すると答えました。また、2008年の国会決議の精神に戻り、本日の要望を、水産庁の担当官、浅野代議士にも伝え、協議した結果を直接畠山会長に伝えると述べました。

なお、面談の様子は、畠山さんの活動を描く、製作中のドキュメンタリー映画『海のアイヌ』(監督藤本幸久)の一コマとして撮影されました。

(1)先住民族捕鯨
先 住民族捕鯨は、国際捕鯨委員会(IWC:International Whaling Commission)では「先住民生存捕鯨」(Aboriginal Subsistence Whaling)というカテゴリーで認められており、商業捕鯨の中止(モラトリアム)の対象外となっています。

(2)世界で捕鯨をする国々・地域
1997年に設立された民間の捕鯨業者のための国際団体である、世界捕鯨者協会(the World Council of Whalers)のウェブサイトには、以下の国々・地域が挙げられています。グリーンランド(デンマーク)、カナダ、米国、カリブ海地域、アイスランド、フェロー諸島(デンマーク)、ノルウェー、ロシア、インドネシア、フィリピ ン、日本、アオテアロア(=ニュージーランド)。

このなかでIWC先住民生存捕鯨の枠で捕鯨している国・地域は、グリーンランド、カリブ海地域、米国、ロ シアです。ニュージーランドのマオリは政府の反捕鯨の立場には反対していますが、捕鯨はしていません。

以下は、仲野政務官に手渡した、要望書です。




2011年12月5日
内閣総理大臣 野田佳彦殿
農林水産大臣 鹿野 道彦殿
農林水産大臣政務官 仲野 博子殿

アイヌ民族伝統生存捕鯨協会
会長 畠山敏

要望書


私、畠山敏は和人最古の記録「津軽一統志」(1670年)に「まふへつ村アイヌ人百人ほど。大将クヘチャイン」と記述されたモペツコタンに生まれ育ったアイヌ漁師です。私の父、畠山寿男は、明治8年末(1875年)の紋別場所の戸籍簿に「幌内から湧別までの海岸筋、川筋、山奥までの10ヵ村92戸361人を統率したアイヌ酋長」と記述されている(新紋別市史上巻)キケニンパ(後に大石蔵太郎と改名)の血を引く先住民族の漁師であり、初代の北海道ウタリ協会(現アイヌ協会)紋別支部長でもありました。

父から漁業経営と支部長の要職を引き継ぎ、アイヌ民族の歴史文化を学ぶ中で、私の祖先達が強要された歴史的不正義の重大さを知り、民族の誇りにかけて今こそ自立と自治を目ざした復権運動が必要だと思うに至り、18年前からアイヌ民族生存捕鯨の復活を水産庁の関係機関や政治家の皆さんに訴え続けてきました。

私達のこの悲願は、2007年9月、国連総会で日本政府代表も含めた141ヵ国の賛成で採択された「先住民族の権利宣言」の中に「歴史的不正義からの回復」が高らかに謳われているにもかかわらず、さらに翌年の衆参両院において全会一致で採択された「アイヌを日本の先住民族と認めることを求める決議」を受けて政府が正式に認めたにもかかわらず、いまだに実現の糸口すら示されておりません。

私の先祖達にとって捕鯨を中心とした狩猟・漁業の共同作業は、自然界の万物を神の国からの尊い贈り物と感謝の祈りを捧げつついただいた精神文化の柱でした。1640年頃に初めてオホーツク海を探検したオランダのフリース号の乗組員の書いた『フリース号の探検』にも「捕鯨と礼節の民アイヌ」という詳しい見聞録が収められていることから、その昔、私の先祖達はアイヌモシリ(人間の大地=北海道の旧称「蝦夷国」のアイヌ語)で鯨を捕りながら自由に豊かにつつましく生を営んできたことは明らかな歴史的事実です。

最後に、私が内閣総理大臣ならびに農林水産大臣閣下に今最も訴えたいことを書きます。

日本人の中に現在もなお根強く残っているアイヌに対する「劣等民族視」という偏見のために、アイヌ同胞でありながら、それを公言することすら恐れ嫌う人達が数知れず存在するという不幸な事実を直視してください。この差別と偏見を決定的にしたのは大日本帝国政府が作った「旧土人保護法」という法律であり、その制定議会(貴族院)において政府要員がアイヌ民族をして「無学文盲蠢爾たる有様」と虫けらの如く断定したことに証明される和人の尊大なる差別感情の強さなのです。

世界は民族間の優劣を競った自然征服争いから脱して、多民族、多文化共生の大道へと大きく方向転換を始めています。日本国政府も今こそ歴史的不正義を自ら解消する決意を内外に明示され、不当に奪った先住アイヌの生存のための捕鯨の権利を回復させる責任と義務を全うされることを心からお願い申し上げます。

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