mixiチェック モペッ・サンクチュアリ・ネットワーク: 国連人権理事会への市民外交センターの文書声明(翻訳)

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2010年9月14日火曜日

国連人権理事会への市民外交センターの文書声明(翻訳)

国連総会A/HRC/15/NGO/24

人権理事会

15会期

特別協議資格をもつNGOである市民外交センターの文書声明


アイヌ民族の土地における産業廃棄物処分場の建設計画によって、

先住民族の権利が日本で否定されている

 

1.2007年9月、日本政府は国際連合総会において、先住民族の権利に関する国際連合宣言(UNDRIP)に賛成票を投じた。2008年6月、日本の国会は、政府にアイヌ民族を日本の先住民族として認めることを求める決議を全会一致で採択し、内閣官房長官は即座にそれに賛同する公式声明で応じた。2009年12月、政府は内閣官房室にアイヌ政策推進会議を設けた。そのメンバー15人のうち5名がアイヌ民族である。私たちはこうした最近の進展を歓迎している。


2.だが、国内レベルでの見かけ上の風向きの変化にもかかわらず、先住アイヌ民族の権利は、地方レベルでははっきりと否定されている。そのよい例が、道東のオホーツク地域におけるモベツ川水源域における産業廃棄物処分場建設計画の状況である。


3.日本の北海道、紋別市にあるモベツ川は、紋別に暮らすアイヌ民族にとって聖なる存在である。コミュニティの人々は、数百年もの間、川の周辺の自然環境に依存して生計を立ててきた。今日、紋別のアイヌ民族は、「カムイチェップ・ノミ」という川に戻ってきたサケ(彼らにとって神聖かつ主要な食べもの)を歓迎する儀式を毎年実践している。儀式の遂行に配慮して、2002年から北海道政府は儀式の目的に限って、モベツ川におけるサケの特別採捕をアイヌ民族に許可している。このように、モベツ川流域においては、熊やサケ・マス、ワシなどを含む動物、魚、鳥などの豊な生態系を見出すことができる。その森は、下流の湖や海岸に生息する生物に豊富な栄養分を与える。この地域は動植物の宝庫である。


4.「私たちの母なるモベツ川を汚さないで!」この地域に暮らすアイヌ民族は、他のNGOと共同で、産業廃棄物処分場の建設計画に反対を表明した。彼らは、2009年以来、北海道政府に対し、先住民族の権利に関する国連宣言(UNDRIP)のもとで与えられた自分たちの土地に対する権利、環境を保全・保護する権利、文化的権利を主張し続けている。


5.2010年2月、紋別市は地域のアイヌ民族との誠実な協議も行わず、国連宣言に明記された原則や権利を尊重するよう求めたアイヌ民族の要求を完全に無視し、建設計画を承認した。そしてさらに、北海道政府は2010年7月末に専門委員会によって出された報告に沿った計画への最終許可を与えた。委員会にはアイヌの代表は一人も含まれておらず、その報告は国連権利宣言(UNDRIP)には何ひとつ言及していない。北海道政府の見解によれば、国連権利宣言(UNDRIP)は、国内法や日本の行政システムになんら効力はなく、計画に与えた許可は、制度上、既存の手続にしたがって正当化されるということである。このことは、地方政府がアイヌ民族の権利を守ったり、促進したりする上で何ら責任ある役割を果たさなかったということを意味する。


6.2010年4月、人種差別撤廃委員会は、日本政府によって提出された定期報告を審議した後、最終所見(CERD/C/JPN/CO/3-6)を採択した。委員会は、日本における国連権利宣言(UNDRIP)の実行が十分になされていないことに対する懸念を表明し、政府にアイヌ政策推進会議の中に国連権利宣言(UNDRIP)の実行に関する作業部会を設けるよう勧告している。


7.市民外交センターは、アイヌ民族を先住民族として認めた日本の国および地方政府が、国連権利宣言(UNDRIP)やとりわけアイヌ民族の特別な権利を全く無視していることを憂慮している。日本政府は、今年10月には名古屋で開催される生物多様性条約第10回締結国会議(CBD COP10)を主催する。紋別のアイヌ民族や他の支援NGOによって北海道政府に提出されたモペッ・サンクチュアリ構想という代替案は、CBD COP10において提案される「先住民および地域共同体の保全地域(ICCAs)」のひとつのモデルであり、よい実践例である。COP10に関して、日本政府は2010年5月に生物多様性に関する新たな国家戦略について解説するパンフレットを発行した。しかし、パンフレットでは、その大部分がアイヌ民族の伝統的な土地である北海道の豊かな自然環境について紹介されていながら、先住民族の権利、とりわけアイヌ民族の権利については言及されていない。


8.私たちは、先住民族の権利の尊重は文化の多様性および生物の多様性の保全や促進と密接な関係をもっていることを強調したい。言い換えれば、国連権利宣言(UNDRIP)は人類の未来に対する新たな社会的パラダイムをすべての人々に与えている。私たちはまた、先住民族の権利が国内および国際的なコミュニティのレベルのみならず、紋別のアイヌ民族が主張している事例に示されるような地方レベルにおいても実現されなければならないことを強調したい。

2 件のコメント:

  1. 拝啓 7月末に道が建設の容認をしたとありますが、その後どうなりましたか? 11月10日にマレーシア・マラヤ大学で行われるUNDRIPの会議にて、日本(アイヌ・神道)とマレーシア(オランアスリ)の自然観と環境問題について報告発表するので、最新の状況を教えていただけると助かります。何卒よろしくお願いいたします。敬具
    マラヤ大学大学院理学部環境哲学研究生 福崎清隆

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  2. 失礼いたしました。私のメールアドレスはplanetshanti@gmail.comです。よろしくお願いいたします。
    福崎

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