道による「紋別市廃棄物処理センター」設置許可の取り消しを求める決議
道は、私たちが問題点を指摘してその設置に反対してきたにもかかわらず、紋別市に計画されている㈱リテックの管理型産業廃棄物処分場を7月27日に認可しました。それを受けて、㈱リテックは9月2日より建設工事に着工し、9月29日には安全祈願の起工式が開催されようとしています。これを憂慮した私たちは、本日、紋別の現地からはもとより道内各地域の住民の方々の参加を得て、建設着工に抗議するため、札幌市内で緊急集会を開催しました。
紋別現地からの経過の報告と、研究者・専門家の立場からの問題点の指摘によって、この建設事業には以下のような法制度上また技術上の重大な欠陥や問題点があることが明らかになりました。
(1)今回建設されようとしている管理型処分場と同様の施設は全国ありますが、行政や業者がその安全性を保障していたにもかかわらず、遮水シートの破損や堰堤の倒壊、防災調整池の不当沈下による亀裂の発生、汚水漏れ検知装置の不具合など、重大な欠陥や問題が多く発生しているという事実が明らかになりました。
(2)㈱リテックのこれまでの説明では、受入れる廃棄物の安全性、および搬入禁止廃棄物へのチェックシステムや、無害化処理の具体的な方法が、まったく明らかにされておらず、これでは、安心、安全な処分場とは到底考えられません。私たちは、㈱リテックの技術的な能力や管理運用能力、ひいては、その経理的基盤が、この処分場を埋立中及び終了後の長期にわたって適切に遂行するには著しく不足しているのではないかとの疑問をもたざるをえません。
(3)全国の既設の管理型処分場の下流河川では、魚介類や水生動植物などの生態系に異変が生じたり、高濃度塩分の放流水のために稲の生育障害が起きているなどの事例が生じています。紋別の処分場から放流される処理水にも、発がん性や催奇形性、遺伝毒性、免疫毒性など内分泌かく乱作用(いわゆる環境ホルモン作用)を有する物質が含まれる可能性が大きいにもかかわらず、これまでの検討では、そのことを㈱リテックも許可を出した北海道庁もまったく考慮していません。
(4)本処理施設については、とくにその下流域で、日本の先住民族であるアイヌ民族がカムイチェップノミなどの伝統的行事を行っており、下流のモベツ川の遡上するサケなどの魚類にとどまらず、モベツ川そのものがアイヌ民族にとっては、聖地ともいうべき重要な自然となっています。2007年の国連による先住民族の権利宣言、2008年の国会議員による決議により、アイヌ民族の権利を尊重・回復しなければならないことは、国際的に要請された我が国の重要な責務であり、この意味からも、アイヌ民族にとっての重要な自然を壊す本処理施設については、先住民族の権利回復の観点から根本的な見直しが必要です。
(5)それにもかかわらず、道の設置した専門家委員会では、現地調査をいちども行わず、また全国で起きている同様の施設によって引き起こされている被害について検討することもなく、本施設計画を認可してしまいました。私たちは、まず、専門家委員会でどのような検討が行われたかを知るために、議事録を公開していただきたいと思います。
(6)以上の諸点から鑑みて、道庁は、これまでの検討が不十分であったことを認めて直ちに設置許可を取り消し、指摘された問題点等について、地域住民や、問題点を指摘する研究者・専門家を交えて再検討することを要請します。
また、本計画が先住民族の権利に関する国際的な人権規準に反したものであることは、第15会期国連人権理事会(9月13日~10月1日)にも報告されており、北海道ばかりでなく日本の国際的な信用を著しく損なうことが懸念される点も確認しておきます。
2010年9月26日
「紋別市廃棄物処理センター」建設問題検討緊急集会 参加者一同
代表 畠山 敏 (モペツ・サンクチュアリ・ネットワーク代表)
鷲頭幹夫 (モベッ・サンクチュアリ・ネットワーク事務局)
小泉雅弘 (さっぽろ自由学校「遊」 理事)
結城幸司 (世界先住民族ネットワーク・アイヌ 副代表)
藤原寿和 (廃棄物処分場問題全国ネットワーク共同代表)
小野有五 (北大・大学院地球環境科学研究院教授)
上村英明 (市民外交センター 代表)
松木 清 (夕張市民ネット 副代表)
築田敬子 (函館東山地域環境対策委員会 代表)
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